研究概要 |
本研究課題は、コンポメーションの変化によって生じるキラリティーである軸性キラリティーに着目し、薬物の作用発現時に生じる真に活性な構造を洞察し解明することにより、新たな生物活性物質、医薬品シードの創製をめざすものである。本年度は、以下の課題(1)新規ACAT阻害薬、および(2)新規バソプレッシンV1,V2受容体拮抗薬の創製に成功し、それらについて主に検討した。それらのエナンチオマーの分離はキラルカラムを用いたHPLCあるいはジアステレオマー法などを用いた。分離したエナンチオマーの絶対配置は、X線構造解析、旋光性、円二色性スペクトルなどを用いて決定し、物理化学的安定性および生物作用などを調べた。 (1)ACAT阻害薬の合成と立体化学の解明 ベンゾラクタム系化合物についてAr-アミド(ラクタム)部分の軸不斉に基づく立体化学を明らかにした。この知見をもとに、強いACAT阻害作用を示す化合物を見出し、軸不斉と生物活性の相関を明らかにした。また、1,5-ベンゾジアゼピノン骨格の構造的特徴を新しく明らかにし、窒素原子がキラル中心として存在することを示した。 (2)バソプレッシンV1,V2受容体拮抗薬の立体化学の解明 強いバソプレッシン受容体拮抗作用をもつ1,5-ベンゾアゼピン誘導体を見出した。その立体化学を明らかにし、活性発現にAr-アミド部分の軸不斉構造が重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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