本年度は、昨年度までの活性発現のメカニズム解析および第一段階の実用計算を基盤として、実際の合成開発を行う候補化合物を絞り込み、その最終的な最適化ステップと位置付けた。まず、最近問題となっているタミフル耐性を獲得したインフルエンザ変異株にも有効な新規治療薬を分子設計するとともに、薬剤耐性を獲得したウイルスの自発変異の原因を解析した。また、重篤な副作用が問題となっているペルオキシゾーム増殖応答性受容体-Y(PPAR-Y)アゴニストに変わる新規候補化合物として、PPARsのすべてのサブタイプに対して高活性を有するパンアゴニストの開発を目指した。リガンド結合に伴う誘導適合効果を考慮した理論的相互作用解析から、各サブタイプに有効な相互作用の原因を特定し、新規なスーパーパンアゴニストの設計に成功した。現在、それらの合成およびアッセイの実行を検討している。さらには、骨粗しょう症やカルシウム代謝異常に対するターゲットであるビタミンD受容体(VDR)に対する世界初の作用分離型モジュレータの設計・開発に成功し、このモジュレータ化合物について、現在、特許申請中である。この新規モジュレータは、VDRパーシャルアゴニスト活性を有するだけでなく、アンタゴニスト活性をも有する極めて興味深い化合物で、組織選択的VDRモジュレーターとして機能して、高カルシウム血症を誘導せずにその他の作用を誘導できるため、今後、実際の創薬化に期待がかかる。また、方法論的にも、本年度は、汎用プログラムとのインターフェースを開発し、種々のリガンド結合に伴う誘導適合効果を考慮したLBD全体の最適化計算が可能な高速最適化法を開発した。
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