研究概要 |
酵素に匹敵する触媒機能を持つリボザイムの反応機構はほとんど解明されていない現状にある。我々は、C4-置換イミダゾールC-ヌクレオシドホスホロアミダイド(C_0-PA)を創製し、RNAにイミダゾール(Imz)を挿入することで、「リボザイムの反応機構を解明する化学的手法」を開発した。しかし、C_0-PAは、不安定であり、またVSリボザイムの活性中心のひとつG638では弱い活性しか見られなかった。そこで、新たにリボースとImzに2炭素増炭したC_2-PAをデザインし、その合成に成功した。この研究の中で、イミダゾール-NにPOM基、2'-OHにCE基を用いることで安定なC_2-PAが生成することを見出した。さらに、共同研究者のLilleyらは(英国,Dundee大)、C_2-PAから化学合成したイミダゾール改変VSリボザイム(G638VSC_2Imz)では、G638VSC_0Imzよりも15倍切断速度が上昇するという興味深い結果が得た。これは、ribose-(CH_2)_n-ImzタイプのPAsによってより効果的なRNAプローブの開発が可能であること、また、結晶構造解析のなされていない唯一のVSリボザイムの活性中心の構造を解明できる新たな手法になる可能性を示した。これらの成果は、アメリカ科学会誌であるJ.Org.Chem.誌(2009)に掲載した。 上述の研究は、イミダゾールが擬核酸塩基として機能するという初めての結果であるため、この成果に基づき合成したOUP-165は、T47D乳癌細胞に対して増殖抑制作用を示した。OUP-165は、エストラジオール(E_2)とC_2-Imzのハイブリッド化合物であるため、基盤構造のC_0-Imzを持つハイブリッド化合物の合成研究を新たに行い、その合成にも成功した。 一方、共同研究者の高岡正徳教授(大薬大)は、E_2の生合成酵素ヒト17β-HSDの遺伝子組み換え実験に成功しているため、C_2-Imzを持つOUP-165及びC_0-Imzからなる合成化合物のヒト17β-HSDに対する阻害活性を比較検討することで、構造活性相関への研究が可能となった。
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