研究概要 |
RNA触媒(リボザイム)の反応機構は、今だほとんど解明されていない現状にある。我々は、C4-置換イミダゾール(Imz)C2'-O-TMS-リボヌクレオシドホロアミダイド(C_0-PA,1)を創製以来、リボザイムの中心塩基にImzを挿入することで、「リボザイムの酸-塩基触媒反応機構を解明する新しいchemo-geneticmethod」を開発してきた。さらに不安定な1から、Imz-NにPOM基、2'-OHにシアノエチル(CE)基を用いる新しい保護基の組み合わせを開発することで安定なImz-N-POM-2'-O-CE-C_n-PAs2(n=0,2)が生成することを見出した。特に、2a(n=2)から、VSリボザイムの活性中心のG638にC_2-Imzを導入するとC_0-Imzの場合より、切断速度が15倍増加するという重要な知見を得た。昨年度は、さらに系統的に切断速度を調べるために炭素鎖n=1,3のPAs(2b,c)の合成を検討しそれらの合成を達成した。これまでの研究は、Imzの酸-塩基両性に基づいたリボザイムの重要な2つの核酸塩基を決定するアプローチであった。しかし、Imzを用いた時、どちらの核酸塩基が酸あるいは塩基として機能しているのかという事を決定することは出来ない。そこで、我々は医薬品開発の中でカルボン酸の等価体として用いられるテトラゾール(Tez)に着目し、リボザイムの重要核酸塩基をTezで置換する新しい化学的手法を考案し、その実現に向けてTez-C_n-PAsの合成研究を現在行っている(現在 Tetrahedron Lett.に投稿中)。 一方、乳癌増殖阻害を目的として従来ヒト17β-HSD阻害剤活性を持つエストラジオール(E_2)とImz-C_n-ヌクレオシドのハイブリッド化合物の合成研究を行ってきたが、昨年よりヒト(h)のヒスタミンH_3アンタゴニストの乳癌増殖抑制効果に基づいた強力な非イミダゾール系hH_3アンタゴニストの発見、さらに白金制癌剤に着目したテトラゾ架橋白金(II)二核錯体の開発を行い、その中から、膵癌に対して顕著な腫瘍活性を発揮するものを見出することが出来た。
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