研究課題/領域番号 |
21590133
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
田口 修 三重大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (90197244)
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研究分担者 |
小林 哲 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (20437114)
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患 / タバコ / 血管内皮細胞傷害 / 凝固系因子 / 炎症性サイトカイン / 肺胞上皮細胞傷害 / 活性化プロテインC / 肺傷害 |
研究概要 |
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)の発症には多種多様な因子が関与しており、誘発因子として唯一確立されたものは喫煙である。平成22年度では肺動脈内皮細胞、肺胞上皮細胞、肺胞マクロファージを用いて、凝固制御因子である活性化プロテインC(APC)の抗炎症作用、APCの受容体であるendothelial protein C receptor(EPCR)、protease-activated receptor(PAR)-1の発現を検討した。また、喫煙誘発肺傷害マウスモデルを用いてAPCの抑制効果も検討した。 a)In vitro実験では肺動脈内皮細胞、肺胞上皮細胞、肺胞マクロファージの膜上にEPCR、PAR-1の発現が認められた。また、APCはtumor necrosis factor-α(TNFα)、monocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)などの炎症性サイトカイン・ケモカインの分泌を抑制した。抗EPCR抗体又は抗PAR-1抗体の存在下でAPCの抗炎症作用が阻害されたことからAPCの抑制作用にEPCRとPAR-1の両者の受容体が不可欠であることが明らかになった。 b)In vivo実験のマウス肺傷害モデルではAPCの投与により気管支肺胞洗浄液中の総細胞数、総蛋白量、トロンビン、組織因子などの凝固系因子、TNFα、MCP-1などの炎症性サイトカインの濃度が、非投与群に比べ、有意に低下した。 c)COPDにおけるPAR-1の役割を明らかにするため、PAR-1ノックアウトと野生型の2種類のマウスに喫煙を暴露させ、肺傷害の程度をグループ間に比較検討した。その結果、PAR-1ノックアウトマウスでは、野生型マウスに比べ、気管支肺洗浄液中の細胞数、総蛋白量、炎症性サイトカインの濃度が有意に低下した。 以上の結果より、PAR-1は喫煙誘発肺傷害の病態機序に重要な役割を果していることが明らかになった。又、喫煙誘発肺傷害に対してAPCが抑制作用を示したことからAPCはCOPDに対する治療薬としての有用性を示唆している。
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