代表者はこれまでに、地下水汚染物質として問題になっている有機塩素系溶剤、トリクロロエチレン(TCE)が、それ自身が抗原となることなく、アレルギー発症に関与する可能性があることを報告してきており、本研究は、その詳細なメカニズムを検討することを目的としている。 本年度、まず卵白アルブミン(OVA)抗原として、アジュバントとして水酸化アルミニウムゲルを用いて、免疫を行い、その際にTCEを同時に2週間飲水により曝露した場合の脾臓細胞の増殖を検討すると、同時に脾臓細胞を刺激し、脾臓細胞から分泌される各種サイトカイン分泌について検討を行った。その結果、脾臓細胞の増殖については、3mg/LのTCE曝露によりOVA特異的な細胞増殖が亢進していることが確認された。またT細胞特異的なマイトジェンであるConcanavalinAで刺激した際、及び抗CD3抗体で刺激した際にも細胞増殖の亢進が確認されたことから、TCEは抗原特異的なT細胞増殖の亢進を介してアレルギー反応を増強する可能性が示唆された。また、サイトカイン分泌は、IL-2、TNF-αについては、0.03、3mg/LのTCE飲水曝露により、抗原刺激による分泌の増加が確認された。IL-2はT細胞増殖に関与するサイトカインであるため、TCE曝露による抗原特異的なT細胞増殖亢進には、IL-2分泌の増加が関与する可能性が示唆された。また、T細胞からのTNF-α分泌の増加により直接的に炎症の増強関与する可能性も示唆された。IL-4、IFN-γに関しては0.03mg/LのTCE曝露によりその分泌の増強が確認された。このことから、TCEによる免疫機能への影響はその曝露濃度により、影響が異なる可能性が考えられる。
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