1)トリクロロエチレン(TCE)飲水曝露による脾臓細胞のサイトカイン分泌増強作用: 雄性Balb/cマウスに2週間0.03、3mg/LTCEまたは蒸留水(対照)を飲水させた後、卵白アルブミンで刺激を行ったマウス脾臓細胞培養上清中、IFN-γ、IL-4、IL-3及びTNF-α分泌量について検討した。その結果、2週間0.03、3mg/LTCEを飲水させたマウスの脾臓細胞において、IL-3、TNF-α分泌量が、対照と比較して有意に増加することが確認された。IFN-γ、IL-4分泌量については2週間0.03mg/LTCE飲水曝露のみで対照と比較して分泌量の増加が確認された。これらの結果からTCE飲水曝露により、脾臓細胞からの種々のサイトカイン分泌量が増加することが示唆された。 2)TCE曝露がT細胞受容体(TCR)を介したT細胞活性化に関わるシグナル伝達系に及ぼす影響の検討: 雄性Balb/cマウスから摘出した脾臓より得られたリンパ細胞に対してTCEを直接処理し、T細胞レセプター(TCR)刺激を介したT細胞増殖に及ぼす影響について検討を行ったところ、1nM以上でのTCE処理により、TCR-CD3刺激依存的に細胞増殖を促進することを明らかにした。また、TCEがCD4+およびCD8+T細胞増殖に及ぼす影響について比較検討を行ったところ、CD8+T細胞においてより顕著な細胞増亢進が認められた。さらに、TCR刺激を反映するLckのリン酸化状態が、CD4+T細胞と比べてCD8+T細胞で顕著に上昇していた。 また、in vivoにおいてTCE飲水曝露による免疫群の脾臓におけるCD8+T細胞、CD4+T細胞の割合の増加が認められた。これらのことから、TCEはTCR刺激時に直接的にT細胞に作用し、その分化及び増殖に影響することが示唆された。
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