日本近海で捕獲されたキハダマグロとビンナガマグロの水銀汚染度は南の地域で捕獲されたものほど高い傾向が認められ、一方PCBやDDTなどの有機塩素系化合物による汚染度は北の地域で捕獲されたものほど高い傾向が認められた。また安定同位体比であるδ^<15>Nは北の地域で捕獲されたものほど高く、δ^<13>Cは低い傾向を示した。同様の汚染傾向は天然クロマグロでも認められたが、安定同位体比は全く異なった傾向を示し、δ^<15>Nは北の値域で捕獲されたものほど低く、δ^<13>Cは高かった。その相違の原因については、現在検討中である。 養殖クロマグロにおける有機塩素系化合物による汚染度は天然クロマグロよりも高く、これは養殖クロマグロの脂ののりのよさと関係すると思われる。養殖クロマグロは未成熟の小型のクロマグロであるにもかかわらず、安定同位体比は天然クロマグロと同程度あるいはより高い値であった。これは養殖魚一般に認められる現象である。養殖クロマグロの水銀汚染度は天然クロマグロよりも低く、これは魚体の大きさと関係していると思われる。 養殖クロマグロの場合では、天然の場合に認められた水銀汚染と有機塩素系化合物汚染の地域差は明確に認められなかった。この原因として養殖クロマグロの水銀および有機塩素系化合物汚染は海水中のこれらの化合物濃度のみならず餌に含まれているこれらの化合物濃度を反映していることが考えられる。
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