研究概要 |
平成21年度の研究により,糖尿病モデル反応において生成することが明らかとなった新規変異原物質5-amino-6-hydroxy-8H-benzo[6, 7]azepino[5, 4, 3-de]quinolin-7-one(ABAQ)の合成法を確立した.すなわち,1-(3-bromoprop-1-ynyl)-2-nitro-benzeneと5-amino-2-methoxyisophthalic acid dimethyl esterから得られたpropargylamine誘導体を基質に用い,Larockのキノリン合成法により鍵中間体となるキノリン誘導体を合成した.その後,種々官能基を変換することでABAQを合成した.ABAQのin vitroにおける遺伝毒性をチャイニーズハムスター肺(CHL/IU)細胞を用いた小核試験により調べた.S9 mix存在下,ABAQを0.2~100μg/mlの濃度でCHL/IU細胞に6時間曝露し,細胞を固定・染色後,小核発生頻度及び細胞の生存率を調べた.ABAQは0.2~50μg/mlの範囲で用量依存的に小核を誘発することがわかった.50及び100μg/mlで曝露した際に,陰性対照に比べて有意に増殖が抑制された.また,ABAQのin vivoにおける遺伝毒性を末梢血小核試験を用いて調べた.ICRマウスにABAQを25及び50mg/kg体重で腹腔内投与し,投与24,48及び72時間後に尾静脈より採血した.網赤血球について小核発生頻度を調べた.ABAQを25及び50mg/kg体重で投与した際,投与48時間後まで小核発生頻度は経時的に有意に増加した.また,いずれの採血時間でもABAQは用量依存的に小核を誘発していた.以上の結果,ABAQがin vivo及びin vitroにおいて哺乳類細胞に対し,遺伝毒性を示すことが明らかになった.
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