研究概要 |
平成21年度の研究により、糖尿病糖尿病モデル反応において生成することが明らかとなった新規変異原性物質5-amino-6-hydroxy-8H-benzo[6,7]azepino[5,4,3-de]quinolin-7-one(ABAQ)の生体内での生成について明らかにするため、尿中のABAQの分析法について検討した。ABAQは、平成22年度に確立した合成法により合成し、標準物質として用いた。尿試料からの分析の前処理法として、液液抽出法と固相抽出法について検討した。クロロホルムを用いた液-液抽出によるABAQの回収率は58.1~80.1%で、平均値は70.1%(標準偏差8.3)であった。また、Sep Pakclassic C18 cartridgeを用いた固相抽出におけるABAQの回収率は64.3~74.5%で、平均値は70.4%(標準偏差4.4)であった。そこで、これらの方法を組み合わせて尿を前処理したのち、LC/MS/MS法によりABAQを分析こととした。尿試料として、標準飼料を与えた正常ラット、標準飼料を与えたII型糖尿病モデルラット及びトリプトファン高含有飼料を与えたII型糖尿病モデルラットについて、24時間尿を採取し、ABAQの分析を行った。その結果、いずれのラット尿からもABAQが検出され、ABAQの尿中含量はトリプトファン高含有飼料摂取II型糖尿病モデルラット>標準飼料摂取II型糖尿病モデルラット>標準飼料摂取正常ラットであった。以上の結果から、正常ラット体内においてもABAQが生成し、糖尿病状態の生体内におけるメイラード反応の亢進によりABAQの生成量が増加すると考えられた。ABAQの生体試料からの検出は本研究が初めてであり、今後、糖尿病状態の進行とABAQの生成量の関係並びにABAQの生成と糖尿患者における遺伝子損傷の関係について明らかにする必要があると考えられる。
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