研究概要 |
1 金属が脂肪細胞に影響を及ぼす可能性 金属曝露が脂肪組織の形態及び糖尿病発症因子に影響を及ぼす可能性を調べるため、マウスを(1)正常食群、(2)高脂肪食群に分け、2週間摂取させた。さらに夫々の群に、無機水銀、ヒ素、コバルト及びマンガンを皮下投与した。その結果、高脂肪食摂取マウスは脂肪細胞のサイズを増大させ、ヒ素、無機水銀、コバルト及びマンガンはHFDより小さいサイズの脂肪細胞を増大させた。この中で、特に必須金属コバルトと毒性金属無機水銀を比較検討した。毒性の高い無機水銀は、plasma leptin,脂肪組織中leptin mRNA発現レベルを低下させたが、コバルトは脂肪組織leptin mRNA発現、血中LDL-コレステロールを低下させ、HDL-コレステロールを増大させた。この作用はAMP-kinase(AMPK)α2mRNA発現に関連することが示唆された。 2 Mesoderm-specific transcript(MEST)の脂肪細胞の分化・増殖への効果 マウスの生後早期の脂肪組織を分離して得られた脂肪細胞の初代培養を行った。その増殖過程をみると、増殖規定因子のPPAR類の遺伝子発現は、培養開始に従い増大し、ピークを経て減少する。細胞への脂肪細胞取り込み因子の一つには、MESTがあるが、その遺伝子発現は、培養開始に従い増大し、ピークを経て減少する。脂肪細胞が増殖し、脂肪を取り込んで成熟脂肪細胞化する過程と一致する。しかし、その後MEST遺伝子発現は、さらに増大する傾向が見られた。この事は、通常のPPARや増殖過程では見られない傾向であり、脂肪細胞が成熟化後、肥大化する過程にもMEST遺伝子が関与する可能性を示した。
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