研究概要 |
マウス粘膜免疫成立メカニズム解析と環境アレルゲンの減感作への応用に関し,以下の3項目の検討を行った. (1)BALB/c胎仔マウス由来の小腸腸管上皮細胞の初代培養系にSV40ラージT抗原遺伝子をレトロウイルスベクターを用いて導入し、過剰発現させることにより不死化したマウス小腸上皮細胞株をTLR1/2リガンドであるPam3CSK4で刺激して得られた培養上清が、マウス腸管粘膜固有層由来B細胞のIgA産生を促進すること、すなわち防御抗体の産生を促すことを見いだした。ジペプチドカルノシン(N-β-Ala-L-His)は上皮細胞に作用し、この活性並びにIL-6活性を増強することが明らかとなった。 (2)アレルギー経口感作、BALB/c食物アレルギーモデルマウス群では、OVA投与6時間後のバイエル板でTfhへの分化を示すIL-21産生が著しく減少しており、濾胞ヘルパーT細胞(Tfh)の分化が抑制されていることが示唆された。Tfhは濾胞の胚中心において、B細胞を記憶B細胞や長寿命の抗体産生細胞へと分化させる働きが知られていることより、生体防御に直接的に関与する腸管IgA産生の変化を糞中のIgAを指標として調べた。惹起段階においては,経口免疫寛容が成立する群では、多量抗原を認識してIgA産生が増えたが、食物アレルギー感作群では抗原に対する認識が消失しておりIgA産生に変動がみられなかったことより、食物アレルギーモデルは、B細胞によるIgA産生機能にも影響を及ぼすことが示唆された。 (3)環境アレルゲンの減感作への応用可能性をめざして、ソバ主要アレルゲンFag e2に対するT細胞エピトープの解析を行った。具体的には、部位特異的アミノ酸変異体を作成し、変異体とFag e2感作BALB/cマウス由来脾臓T細胞の培養を行い、T細胞の分化並びにサイトカイン産生から4つのT細胞エピトープの同定を行った。
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