薬物の効果が減弱する機構のうち、薬物の吸収阻害や薬物代謝酵素の誘導については比較的解明されているが、薬剤抵抗性の遺伝的因子については未だ明らかにされていない。我々はワルファリン抵抗性因子としてビタミンK還元酵素遺伝子VKORに着目し、薬剤感受性との関連を明らかにした。さらに今回ビタミンK代謝酵素であるCYP4F2が薬剤感受性に及ぼす影響を検討し、学会で報告した。VKORの遺伝子分布には人種差が大きいことが知られているので、我々は日本人およびインドネシア人における遺伝子分布を明らかにして欧米白人との差異を示した。この遺伝子頻度の差が欧米と日本におけるワルファリン用量の違いに反映しているものと考えられる。インドネシアにおいては未だ抗凝固能測定に基づく用量設定が十分に普及しておらず、遺伝子頻度を考慮した初期投与量設定は極めて重要であると考えられる。 さらに、我々は全身紅斑性エリテマトーデス患者におけるアザチオプリンの治療効果に及ぼす遺伝子を検索し、感受性亢進に関わるチオプリンメチル基転移酵素(TPMT)およびイノシン三リン酸化酵素(ITPA)を対象として遺伝子型の迅速判定法を確立し、臨床における治療効果への影響を検討した。我が国では伝統的に低用量でアザチオプリンによる治療が行われるため、ITPA遺伝子変異を有する患者では十分に効果が得られるが、通常型の場合ややや効果が劣る可能性が示唆された。アザチオプリンの薬効発現にはさまざまな遺伝子が関与している可能性が示唆されており、現在それらを検索中である。
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