研究課題
医薬品を適正に使用するにあたっては、薬物血中濃度と薬効・副作用を定量化するとともに、薬物動態変動機構を明らかにし、患者個々に投与設計を行うことが必要である。一方、薬物個別投与設計を遂行する上で不可欠であるにも拘わらず最も企画と実施が困難なものの一つは、実際に薬を服用している患者を対象とした臨床薬物動態・薬効試験である。すなわち、一人の患者から速度論的解析に耐えるほど数多くの血中薬物濃度データを得ることは多くの場合困難であることに加え、市販後に一施設で行う臨床薬物動態試験では、対象患者が多くても数十人に限られる。このようなデータの処理に対しては、従来の速度論的解析法は適用が難しく、事前に臨床試験の成否の目処を立てることが困難であった。最近申請者らは、症例数および採血ポイントが少ない探索的な臨床試験データの解析法として、三段階の解析法が有用であることを見出した。本研究では、小・中規模の探索的臨床薬物動態試験に対する三段階のデータ解析法の有用性を再検証するとともに、実際の臨床試験で得られた薬物動態情報を医療現場に提供する事を目的とした。平成23年度は、小児腎移植患者と成人腎移植患者におけるミゾリビンの体内動態変動機構解析を行った。データ解析の結果、患者の腎機能に加え、ミゾリビンの消化管吸収過程の個体差が体内動態の個体間変動の別要因となり得ることが明らかとなった。さらに健常成人を対象とした臨床試験を実施し、ミゾリビンの消化管吸収率は、核酸トランスポーターであるconcentrative nucleoside transporter1(CNT1)のの遺伝的多型の影響を受けることを明らかにした。
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