研究概要 |
本年度は,1.抗真菌剤ボリコナゾール(VRCZ)投与患者についての臨床症例のデータ集積と評価2.成長過程におけるVRCZの体内動態変動要因の検索について研究を行った. 1.VRCZのトラフ濃度(C_<min>)と有効性・安全性を評価した結果,小児・成人ともに,効果を得るにはC_<min>を2μg/mL程度とすること,C_<min>4μg/mLを目安として肝機能の注意が必要なことを明らかにした.さらに,小児で成人と同程度のC_<min>を得るには成人を上回る投与量が必要であり,低年齢の小児ほど高い投与量が必要なことを明らかにした. 2.週齢の異なるラットを用いて吸収,分布,代謝,排泄の4つの因子を比較した結果,週齢間のVRCZの体内動態変動要因は,肝ミクロソームの代謝能が成熟ラットに比較して幼若ラットで高いことが要因であることを明らかにした. これらは,VRCZの適正使用に有用な情報を提供するだけでなく,他の薬剤でも成長過程における体内動態変動が有効性や安全性に影響する可能性があることを示唆している.多くの医薬品添付文書には「小児等に対する安全性は確立していない」とあり,小児薬物療法の適正化を目指して,市販後の特別調査等の臨床使用情報を集積しているのが現状であり,本成果は,医薬品開発および育薬の分野に新たな視点からのアプローチが可能となる上で意義のあるものである. 来年度は,ラットでの代謝能の変動に関与する代謝酵素の特定,小児での適正使用が困難なミコフェノール酸について臨床症例のデータ集積(今年度より集積中)と評価を行う予定である.
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