日本人のがん患者では、オキシコドン徐放錠の有害作用発現に及ぼす薬物代謝酵素、薬物輸送担体およびオピオイド受容体の遺伝子変異の影響については、ほとんど評価されていない。本研究では、オキシコドンおよび活性代謝物のオキシモルフォンの血中動態に基づいて、がん患者におけるオキシコドン徐放錠の有害作用発現に及ぼすCYP2D6、ABCB1およびOPRM1の遺伝子変異の影響について評価した。血漿中オキシコドン濃度はCYP2D6およびABCB1の遺伝子変異の影響を受けなかった。血漿中オキシモルフォン濃度はCYP2D6*10ノンキャリアに比べ、*10キャリアで低い傾向を示した。濃度比(オキシモルフォン/オキシコドン)はCYP2D6*5ノンキャリアに比べ、*5キャリアでは有意に低値を示し、*10ノンキャリアに比べ、*10キャリアで低い傾向を示した。嘔吐の発現率では、CYP2D6*5ノンキャリアと比較して、*5キャリアで高い傾向が見られ、*10ノンキャリアと比較して、*10キャリアで有意に低値を示した。一方、ABCB1とOPRM1の遺伝子変異は、オキシコドン徐放錠の嘔吐の発現率に影響を及ぼさなかった。また、オキシコドン徐放錠による便秘や中枢性有害作用の発現率については、CYP2D6、ABCB1およびOPRM1の遺伝子変異の影響は認められなかった。以上より、がん患者において、CYP2D6の遺伝子変異がオキシモルフォン生成経路に影響し、オキシコドン徐放錠による嘔吐の発現に関与することが考えられた。
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