がん悪液質では、肝臓における急性期タンパク質の合成に伴い、CYP3Aの活性が低下する。本研究では、がん患者におけるオキシコドンの体内動態、ベースライン投与量および中枢性有害反応に及ぼす悪液質の影響について評価した。対象はがん性疼痛に対しオキシコドンによる治療を開始した47名とした。がん悪液質の進行度については、Glasgow prognostic score(GPS)により、ステージ分類を行った。オキシコドンの服用12時間後におけるオキシコドンとノルオキシコドンの血中濃度を評価した。オキシコドンによる臨床効果として、初回タイトレーション後、4週間のベースライン投与量および中枢性有害反応を評価した。対象患者におけるGPSは、0(7名)、1(21名)および2(19名)であった。オキシコドンの血中濃度は、GPSの増加とともに有意に上昇した。さらにその濃度比(ノルオキシコドン/オキシコドン)は、GPSの増加とともに有意に低下した。また、オキシコドンの増量頻度および速度は、GPSの増加とともに有意に低下した。一方、オキシコドンによる中枢性有害反応の発現率は、GPSの増加とともに有意に上昇した。また、GPSを構成する血清アルブミン濃度については、オキシコドンの増量頻度との間に有意な関係が認められた。一方、オキシコドンの血中濃度とオキシコドンの増量頻度および中枢性有害反応の発生率との間には、直接的な関連性は認められなかった。以上より、がん患者において、悪液質は代謝異常や栄養異常を介して、オキシコドンの臨床効果に影響を及ぼすことが示された。
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