難治性てんかん患者に対する新規薬剤を含むてんかん薬物療法において、薬理ゲノミクスと薬物相互作用を考慮した薬剤選択ノモグラムの開発を行うことを本研究の目的とする。最近市販されたガバペンチン、トピラマート、ラモトリギン、レベチラセタムにおいては有効血中濃度域が明らかになっておらず、また全自動測定器用キットの開発はない。そこで、超高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析装置(UPLC/HS/HS)を用い、これら新規薬剤を含む21種の抗てんかん薬について一斉測定法を構築した。各薬物の保持時間は0.5~6.0分で、1検体の分析に10分を要した。21種の全化合物について良好なピーク形状と感度を確認し、臨床使用濃度域で良好な直線性を得た(r^2>0.99)。また、日内変動は6%未満、日間変動は10%未満であった。今後、本システムを用いて臨床データを収集し、新規抗てんかん薬におけるTDMの臨床的有用性を検討する予定である。さらに、抗てんかん薬の脳内移行に及ぼす薬物トランスポータP-糖タンパク質(ABCB1/MDR1)の役割について明らかにするため、mdr1a/1b(-/-)マウスを用いた検討を行った。mdr1a/1b(-/-)あるいは正常マウスに、臨床血中濃度に相当する種々抗てんかん薬を静脈内同時投与し、投与後1時間までの経時的採血と最終時点での脳内濃度を上記のUPLC/MS/MS法を用いて測定した。その結果、mdr1a/1b(-/-)マウスにおいて血中動態は変化しなかったが、フェニトイン、ラモトリギン、トピラマート、クロバザム、タイアガビンの脳内移行が有意に上昇することが示唆された。今後、P-糖タンパク質誘導条件化における抗てんかん薬の脳内移行や、P-糖タンパク質以外の排出トランスポータの寄与について評価し、難治性てんかん治療における薬剤耐性機構について検討する予定である。
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