難治性てんかん患者に対する新規薬剤を含むてんかん薬物療法において、薬理ゲノミクスと薬物相互作用を考慮した薬剤選択ノモグラムの開発を行うことを本研究の目的とする。 本年度は、前年度までに開発したUPLC-MS/MS同時測定法を用いて新規抗てんかん薬に関する臨床データの集積を行った。新規抗てんかん薬ラモトリギン服用中の患者における血中濃度と投与量の比について検討したところ、グルクロン酸転移酵素(UGT)誘導剤併用群では非併用群に比し約1/3の値を示すが、誘導剤の中でも特にフェニトイン、フェノバルビタール併用患者では、カルバマゼピン併用患者と比べて低値を示すため、薬物血中濃度モニタリングを行うことがラモトリギンの用量調節に有用であることが強く示唆された。 さらに、抗てんかん薬の脳内移行を規定する薬物トランスポータとしてP-糖タンパク質(ABCB1/MDR1)及びBCRP(ABCG2)に着目し、mdr1a/1b(-/-)マウス及びmdr1a/1b/bcrp(-/-/-)マウスを用いて、12種の抗てんかん薬の脳内移行を検討した。その結果、フェニトイン、トピラマート、タイアガビンの場合にはP-糖タンパク質が、フェノバルビタール、ゾニサミド、レベチラセタム、クロナザパム、ガバペンチン、タイアガビンの場合にはBCRPが、これらの薬物の脳内移行を少なくとも一部制御していることが明らかとなった。従って、これら薬物トランスポータの発現変動が抗てんかん薬の薬効や耐性発現に寄与していると考えられるため、薬物トランスポータ情報に基づく抗てんかん薬の使い分けや阻害剤の併用が、難治性てんかんに対する薬物治療戦略として有用であることが示唆された。
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