研究課題/領域番号 |
21590159
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
合葉 哲也 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (00231754)
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研究分担者 |
黒崎 勇二 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (90161786)
川崎 博己 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (60125151)
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キーワード | 腎障害 / 肝代謝 / 薬物代謝酵素 / 発現変動 / CYP3A2 / テーラーメード医療 |
研究概要 |
腎臓機能が極端に低下した場合には、腎臓の恒常性維持機能が失われて生体内環境の乱れが生じる。こうした状況を反映し、腎障害患者においては、薬物の血中濃度推移や薬物に対する組織の感受性が大きく変動することが報告されているが、その変動メカニズムは未だ不明である。そこで申請者は、重症腎障害時に、特に中枢神経作用薬物に対する脳神経系の感受性が亢進するメカニズムの解明を目的に、研究計画初年度の平成21年度には、脳組織を取巻く脳脊髄液の電解質濃度に及ぼす腎障害の影響を実験動物において検討した。その結果、腎機能の低下に伴って脈絡叢における血液から脳脊髄液への電解質輸送が低下することを示し、その原因が脈絡叢上皮の脳脊髄液側におけるNa-K-C1共輸送担体NKCC1の発現亢進であることを明らかにした。平成22年度は、先に見出したこうした腎障害の影響の普遍性を検証する目的で、異なる誘発機序により惹起した実験的腎障害モデル動物を用いて比較検討を行った結果、腎障害時には薬物の肝代謝活性が変動することが普遍的に示され、更にその活性変動は用いる基質によって上昇する場合と低下する場合の2通りに分かれることが明らかとなった。次いで、代表的な肝臓の薬物代謝酵素であるCYP3Aサブファミリーを対象に、その発現量に対する腎障害の影響を精査したところ、CYP3A1の場合には発現量変化が認められなかったものの、CYP3A2においては発現量の低下が認められ、またCYP3A9の場合には発現の増加が示唆された.従って、腎障害時には肝臓の薬物代謝活性が変化することで薬物血中濃度が変動し、これが薬効変動の原因になっていることが推察された。また、脈絡叢のNKCC1に加えて肝臓の薬物代謝酵素にも発現変動が生じていることから、腎障害時には遺伝子発現制御に関わる因子が全身性に作用している可能性も示唆された。次年度は、こうした因子の同定を含め、遺伝子の発現変動メカニズムの解明を目指す。
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