抗ウイルス薬リバビリンの重大な副作用である赤血球障害はその赤血球内移行と密接に関連する。本研究はその取り込み機構ならびに赤血球膜における物質輸送とトランスポートソームの関与を解明することを目的とする。昨年度は赤血球と赤血球膜小胞でリバビリン輸送特性に乖離が見られたが、その原因がトランスポートソームの問題ではなく、リバビリン輸送に関わるトランスポーターENT1の低温忍容性にあることを明らかにした。その後、アミノ酸であるアラニンの赤血球膜輸送において、トランスポートソームの関与が示唆されたため検討を進め、以下の知見を得た。 1.ヒト洗浄赤血球において、Na^+依存的な[^3H]アラニン取り込みが観察された。またその取り込みは、非標識アラニンで濃度依存的に阻害された。一方、赤血球膜小胞(ROVs)を用いた取り込み実験では、アラニンの取り込みにNa^+依存性は観察されなかった。 2.Na^+依存性を示すアラニントランスポーターにASCがある。ASCはNa^+依存性交換輸送体であるため、赤血球膜小胞内に非標識アラニンを負荷し、[^3H]アラニン取り込みを測定した。その結果、trans-stimulation効果が観察され、トランスポーター介在性輸送系の関与が示唆された。しかし小胞内外のイオン組成を変化させても、Na^+依存性は観察されず、K^+存在下でも交換輸送活性が認められた。従って、赤血球で観察されたNa^+依存性には、赤血球内に存在する他の因子による制御が関与する可能性が示唆された。 今後さらに、赤血球と赤血球膜小胞の間で認められたアラニン輸送の解離の分子メカニズムについて解析を進め、赤血球における物質輸送とトランスポートソームを含めた制御機構について明らかにしたいと考える。
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