これまでに、赤血球と赤血球膜小胞でリバビリン輸送特性に乖離が見られたが、その原因はトランスポートソームの問題ではなく、リバビリン輸送に関わるヌクレオシドトランスポーターENT1の低温忍容性にあることを明らかにした。本年度はヒト非小細胞肺がん由来A549細胞を用いて、赤血球で観察されたENT1およびグルコーストランスポーターGLUT1の低温忍容性が普遍的なものかどうかについて解析を進め、以下の知見を得た。 1.A549細胞の膜画分においてhENT1のタンパク質発現が確認された。2.A549細胞におけるウリジンの取り込みは、洗浄に用いる氷冷バッファーにENT1阻害剤NBMPRを添加しても有意な差は認められず、洗浄段階でのA549細胞からのeffluxは起こらないことが示唆された。3.37℃およびICT(氷冷下)条件におけるウリジンの細胞内取り込みは、NBMPRの濃度依存的に阻害された。4.37℃条件下でのウリジン輸送に若干のNa^+依存性が認められ、A549細胞においてはhENT1以外のシステム(CNT)が関与している可能性が示唆された。5.D-グルコースのA549細胞への取り込みは、洗浄に用いる氷冷バッファーにGLUT阻害剤フロレチンを添加しない場合、有意な減少が観察され、hGLUT1はICTにおいても機能している可能性が示唆された。6.D-グルコースのA549細胞への取り込みはICT条件下において37℃と同様、フロレチンにより減少した。 以上の結果からヒト赤血球膜小胞と同様に、A549細胞においても、ICT条件下でENT1を介したウリジン輸送およびGLUT1を介したグルコース輸送が起こることが示された。なお、赤血球と赤血球膜小胞におけるアラニン輸送特性の乖離の原因については、現在もトランスポートソームの観点も含め、検討を継続している。
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