薬物血中濃度の測定値を元にした患者独自の薬物動態パラメータの推定において、パラメータ間の確率変数としての独立性を仮定した場合に導かれるベイジアン最小2乗法および多数の測定値が得られる場合に用いられる最小2乗法に対する研究を行った。最小にすべき残差式が2乗和の形の場合には、緩和パラメータ付きガウスーニュートン法がよく収束する。しかし、薬物動態パラメータおよび血中濃度の値が正規分布に従うと仮定して最尤法を用いた場合、最小にすべき残差式は2乗和以外の形を含む式となる。これらの式に対する数値計算において緩和パラメータ付きガウスーニュートン法を用いた場合、緩和パラメータを0に近づけても一般には残差が減少しない、すなわち修正ベクトルが谷向きにならないことを実証した。これに対し、残差式の2階偏導関数を適切に近似し、修正マルカート法を適用すれば修正ベクトルを谷向きにすることができ、優れた収束性を示すことを示した。さらに、薬物動態母集団パラメータを再現するようなパラメータを乱数によって多数作成し、数値計算の初期値として用いた上で残差式を最小にするパラメータを解とすれば、ほとんどののケースで最適解を得ることができることを示した。本方法は、血中濃度の理論式が与えられていない、例えばM-M消失の1-コンパートメントモデルのように微分方程式のみが与えられる場合にも、高精度の数値計算により微分方程式の数値解を十分な精度で計算することで、十分な収束性を持つことを実証示した。
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