平成22年度は、次の二点を明らかにした。 1)Gefitinb耐性肺腺がん細胞H1650のヌードマウスxenograft modelに対して、HDAC阻害とMEK阻害剤との併用は、顕著な制がん作用を発現し、in vivoレベルにおいても本併用療法が有効であることが確認された。また、その制がん作用を媒介する活性酸素(ROS)による殺細胞効果は、移植癌細胞特異的にDNA酸化損傷マーカー8-OHdG(8-hydroxy-2'-deoxyguanosine)が検出されたことにより、in vivoレベルにおいても同様であることが示唆された。 2)HDAC阻害とMEK阻害剤との併用による癌細胞死誘導増強効果のメカニズム解明に関しては、proapoptotic BH-3 only proteinであるBimと抗酸化タンパク質Thioredoxin(TRX)阻害タンパク質TBP-2の関与を明らかにした。すなわち、HDAC阻害によってBimの転写が促進され、さらにBimタンパク質を不安定化するERKによるリン酸化がERK経路遮断によって抑制されることによりBimの発現が顕著に上昇し、作用が増強される。その結果生じる、ミトコンドリア膜電位の低下、ROSの漏出が、本併用メカニズムの一部を説明すると考えられた。一方、TBP-2の転写がHDAC阻害とMEK阻害剤の両薬剤によって誘導され、併用によるさらなる増強で、抗酸化レベルが低下すると考えられた。また、その遺伝子発現にかかわる転写因子としてFOXOファミリーに現在注目して研究を進めているところである。
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