ERK1/2経路の活性化し準がん細胞において、MEK阻害剤は、HDAC阻害剤による活性酸素を介した細胞死誘導効果を増強する。本研究では、HDAC阻害剤とMEK阻害剤との併用効果に関わる鍵分子を同定し、その分子機構を明らかにした。まず、アポトーシス関連Bcl-2ファミリー遺伝子に注目したところ、HDAC阻害剤はアポトーシス促進因子Bimと抑制因子Mcl-1遺伝子を同時に誘導した。一方ERK1/2は両タンパク質をリン酸化し、Bimの分解とMcI-1の安定化によってがん細胞を生存へと導くことから、併用したMEK阻害剤がERK1/2経路を遮断して、生死バランスをアポトーシス促進に傾けた。更に、Bim遺伝子上流の転写因子と考えられたFOXOファミリー遺伝子FOXO3は、HDAC阻害剤とMEK阻害剤の両方によって誘導されたが、その下流遺伝子としては、Bimではなく抗酸化タンパク質thioredoxinを不活化するTBP-2/TXNIPを標的遺伝子としていた。また、Bim、FOXO3、TBP-2のsiRNAによる発現抑制は、両阻害剤併用による活性酸素蓄積、アポトーシス誘導を有意に阻害した。以上より、HDAC阻害剤にMEK阻害剤を併用することによって、Bim、TBP-2の発現増強の結果、顕著な活性酸素蓄積、アポトーシスが誘導されると考えられた。
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