研究概要 |
非小細胞肺癌治療薬であるEGFR-TKIは殺細胞性抗癌薬と異なり皮膚障害、下痢など特徴的な副作用があり、急性肺障害は最も注意すべき副作用である。第2世代であるエルロチニブを投与される患者の薬物体内動態、副作用との関連を検討した。経口投与により2週間で定常状態に到達することが確認された。定常状態のトラフ血中濃度のバラツキは0.2-3.3μg/mLと約11倍であった。皮膚障害は投与初日の最高血中濃度と有意に相関することが示された。急性肺障害を2例認められたが、高い血中濃度はリスク因子の一つと推定された。エルロチニブ体内動態に影響を与える遺伝子群として代謝酵素であるCYP1A2,CYP3A4,CYP3A5および細胞外排出タンパクであるABCトランスポータに属するABCB1とABCG2が考えられるが、P糖タンパクをコードするABCB1の1236C>T,2677G>T/A,3435C>Tと血中濃度との相関を認めた(p<0.05)。ABCB1の変異型(TTT/TTT)を有する患者において有意な血中濃度の上昇とグレード2以上の皮膚障害の発生が認められた。 慢性骨髄性白血病薬治療薬イマチニブの体内動態に影響する遺伝子群を探索行った。血中濃度とDNAが抽出されている35名の症例を対象とした。イマチニブの細胞外輸送に関与すると考えられるABCトランスポータに属するABCB1とABCG2の遺伝多型は体内動態の個人差に影響は認められなかった。また、代謝酵素であるcytochromeP450(CYP)CYP2C9,CYP2C19,CYP2D6,CYP3A4,CYP3A5,CYP2D6においても関連は認められなかった。その後他の因子を網羅的に探索したが、新たにorganic anion transporting polypeptidesであるOATP1A2 and OATP1B3の遺伝多型が関与する事を認めた。
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