研究概要 |
非小細胞肺癌治療薬であるエルロチニブは皮膚障害、下痢など特徴的な副作用があり、急性肺障害は最も注意すべき副作用である。患者個々の毒性と体内動態、薬物動態関連遺伝子、メタボローム解析を実施し毒性の予測可能なとの関連を検討した。皮膚障害は投与初日の最高血中濃度ならびに投与後8日後のトラフ血中濃度と有意に相関することが示された。エルロチニブ体内動態に影響を与える代謝酵素CYP1A1,CYP1A2,CYP3A4,CYP3A5および細胞外排出タンパクABCB1とABCG2の遺伝子多型の網羅的解析により、P糖タンパクをコードするABCB1の1236C>T,2677G>T/A,3435C>TおよびCYP1A1 2455A>G,CYP3A5 6986A>Gと血中濃度との相関する傾向が認められた。ABCB1 1236TT-2677TT-3435TTを有する患者においてグレード2以上副作用の発生が全例認められた。ABCB1の正常型では副作用が認められなかった。更に、エルロチニブ代謝物を網羅的に解析し、患者血液より16個の代謝物を同定し、患者個々の代謝物の生成比を算出したところ、グレード3以上の毒性発現患者においてグルクロン酸抱合活性低下が確認された。 慢性骨髄性白血病薬治療薬イマチニブの体内動態に影響する遺伝子群を探索により、新たにorganicanion transporting polypeptidesであるOATP1A2の一塩基置換をプロモーター領域にあることを新たに同定した。プロモーター解析によりOATP1A2発現解析を実施したが発現に影響は認められなかった。このことから、今回発見した遺伝子多型の機能を評価する必要性があると考えられる。
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