研究課題
VaultはRNAタンパク質複合体で、その発現量と多剤耐性癌細胞における治療抵抗性との相関が指摘されている。この複合体は、major vault protein (MVP)、telomerase-associated protein 1 (TEP1)およびvault poly (ADP-ribose) polymerase (VPARP)の3種類のタンパク質と1種類のRNA分子から構成されているが、vault自体の機能については未だ不明な点が多い。これまでに、MVPはアドリアマイシン(ADM)やエトポシドなどのDNA傷害性薬剤により発現が亢進すること、また、ADMによって誘導されるMVPは、Sp1によってその発現が制御されていることが判明している。今回、本研究では、抗癌剤で誘導されるMVPの抗癌剤耐性機序について解析を行った。培地にADMを加えてヒト大腸癌細胞SW-620 MVP knockdown株とSW-620コントロール株を培養し、抗癌剤によって誘導されるアポトーシスに及ぼすMVPの影響について解析した。SW-620 MVP knockdown株とSW-620コントロール株をADMで処理するとコントロール株では、MVPの発現亢進が認められたが、SW-620 MVP knockdown株ではMVPの発現は認められなかった。また、SW-620 MVP knockdown株とSW-620コントロール株のADMに対する感受性を、MTT測定法を用いて検討した結果、SW-620 MVP knockdown株に比べSW-620コントロール株は、約2.6倍の抵抗性を示した。さらに、SW-620 MVP knockdown株とSW-620コントロール株における活性型caspase 8および活性型caspase 3をイムノブロット法で解析したところ、SW-620 MVP knockdown株は、SW-620コントロール株と比較して、ADMによってより多くの活性型caspase 8および活性型caspase 3が認められた。これらの結果から、vaultがADMによって誘導されるアポトーシスから細胞を防御する可能性が示唆された。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件)
Oncol.Rep.
巻: (In press)
Biol.Pharm.Bull.
巻: 34 ページ: 433-435
巻: 34 ページ: 1418-1425
Int.J.Antimicrob.Agents
巻: 38 ページ: 417-420