研究概要 |
化学物質の曝露による薬物動態関連酵素の誘導をより正確に予測するためには、酵素誘導に関与する転写因子の結合する遺伝子配列をまず明らかにする必要がある。申請者はCYP3A4およびMRP3の新規酵素誘導分子機構を詳細に解明するためにこれらの誘導に関与する新規領域の解析を行って来た。その結果,CYP3A4誘導には必須のDNA領域(mieCYP3A4)が重要であるが,リファンピシンとクロトリマゾールでは異なった誘導様式を示すことを見い出した。本研究では、これらの違いの原因を解明するために新規領域中に存在する転写因子が結合するシス-エレメントの解析を行った。平成21年度の研究結果は、リファンピシン型誘導にはmieCYP3A4中に存在するαおよびβ塩基配列にて構成されるシス-エレメントおよびクロトリマゾール型誘導にはαおよびβ塩基配列に加え、γ塩基配列が必要であることを明らかとした。また、基本的にはこれらの誘導にPXRが関与するが,他の転写因子の関与も示唆された。一方,ヒトMRP3誘導についてMRP3遺伝子のエンハンサー領域約7kbpあたりを解析し、本誘導に関わる新規シス-エレメントの同定に成功した。誘導剤による誘導様式はCYP3A4のクロトリマゾール型誘導に類似していたが,PXRは関与しなかった。また、CYP1A1/2誘導を同時評価可能な培養細胞の樹立を試み、その細胞株の単離にも成功した。
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