研究概要 |
化学物質の曝露による薬物動態関連酵素の誘導をより正確に予測するためには、転写因子の結合する遺伝子配列をまず明らかにする必要がある。申請者は本件研究においてCYP3A4誘導には必須のDNA領域(mieCYP3A4)が重要であるが,リファンピシンとクロトリマゾールでは異なった誘導様式を示すことを見い出し、新たなシスエレメント配列を明らかとした。本年度は、ヒトMRP3についても本誘導に関わる新規シス-エレメントの塩基配列を明らかにすることを試みた。その結果、転写開始点より上流7Kbの領域にMRP3遺伝子の転写活性化に関わる複数の塩基配列を見いだした。また、今回新たにCYP1A1/2を誘導する内因性化学物質として報告されているインディルビンが、CYP3A4およびMRP3を強く誘導することを明らかとした。しかしながら、肝臓に高く発現している既存のレセプターに的を絞り、それら代表的な誘導剤処置あるいはsiRNAを用いmRNAの発現を検討したところ、CYP3A4とMRP3誘導機構は異なり、CYP3A4の誘導には他の誘導剤と同様に核内レセプターの一つである、PXRが関与することが判明した。しかし、MRP3の誘導にはCYP3A4のクロトリマゾール型誘導に類似していたが、核内レセプターは関与しないことが明らかとなった。さらに、MRP3誘導に関わる遺伝子領域とレポーター遺伝子を染色体内に組み込むことにより、恒常的にMRP3誘導を調べることが可能な安定MRP3誘導表か細胞の樹立にも成功した。
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