研究課題
我々が樹立した血管内皮前駆細胞TR-BMEは血管内皮細胞用培地EGM-2で培養することにより壁細胞へ分化する。壁細胞へ分化する因子を同定するため、EGM-2培地に含まれるbFGF,VEGF,EGF,IGFの分化への影響を検討した。分化因子を含まない培地にこれらの因子を添加しTR-BME細胞を培養したところ、bFGF添加のみ壁細胞マーカーであるSMA(smooth muscle α-actin)が増加しなかった。さらにbFGF非添加においては血管内皮前駆細胞マーカーであるCD133発現が消失した。またTR-BME細胞はbFGFレセプターであるFGFR-1を発現していた。したがって、bFGFは血管内皮前駆細胞の未分化維持に関与することが示唆された。さらに20ng/mLのbFGF添加によりTR-BME細胞は非添加時と比較して増殖速度が約150%に増加した。またbFGF添加によりTR-BME細胞は管腔形成能を維持するが、bFGF非添加により管腔形成能は減少した。したがってbFGFは血管内皮前駆細胞の増殖因子および管腔形成能維持因子として機能することが示された。以上により、血管内皮前駆細胞はbFGF刺激を受け、増殖を継続しながら新生血管腔を形成し、ここでbFGF刺激が消失することで壁細胞へと分化する過程が示唆された。本知見は血管新生阻害によるがん治療法開発を目指した抗がん薬の作用点として重要である。
すべて 2010
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