抗腫瘍薬耐性は、悪性腫瘍を治療する際に大きな障壁となっている。種々のキナーゼ経路は、様々な悪性腫瘍で異常な活性化が観察されており、また経路の異常な活性化は腫瘍の悪性度や抗腫瘍薬耐性機構と密接な関連があることが報告されているため、そのような経路は創薬ターゲットとして有効であると考えられている。しかし、各種のキナーゼ経路は正常細胞の増殖・生存などにも重要な役割を果たしているため、細胞機能の維持に必要な経路をも非選択的に抑制することは生体にとって有害となる可能性が考えられる。そこで本研究では、「抗腫瘍薬耐性機構と関わりの深い機能を選択的に抑制する」ことを目的として、抗腫瘍薬に耐性化したヒト腫瘍細胞で「薬剤耐性に関連する活性化経路の探索」と「過度に活性化した経路の抑制による耐性克服」を試みた。 急性骨髄性白血病の標準治療薬として使われているイダルビシンに耐性となったヒト造血器腫瘍細胞において、親細胞株をリファレンスとして特異的に変化している領域をarray based Comparative Genomic Hybridization法を用いて抽出した。その結果、683領域がマルチコピー化した候補領域、889領域がdeletionあるいはmutationが入った候補領域であった。また、耐性細胞でdeletionした889プローブからさらに165プローブを抽出することができた。これらの遺伝子の中には、キナーゼも含まれていた。
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