昨年度の検討により、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を酸処理することでカルボキシル基が導入されることを確認した。今回このSWCNT側壁のカルボキシル基と末端アミノ化ポリエチレングリコールを縮合させることにより、アミノ化SWCNTを合成した。アミノ化SWCNTはラマンスペクトルにおいてカーボンナノチューブに固有の1590cm^<-1>付近に二つに分裂したG-bandが観測され、透過型電子顕微鏡(TEM)写真ではSWCNTの存在が確認された。次にこのアミノ化SWCNT末端のアミノ基に活性エステルを有する蛍光物質Cy5を縮合させることにより蛍光ラベル化SWCNTを作製した。蛍光ラベル化SWCNTは蛍光強度測定によりCy5特有の蛍光が観測され、TEM写真ではSWCNTが観察されたことから蛍光ラベル化SWCNTが作製できたことを確認した。そこでこの蛍光ラベル化SWCNTについて体内動態特性を検討するため、蛍光ラベル化SWCNTをマウスの尾静脈内に投与した後の全身蛍光強度を蛍光in vivoイメージングシステムを用いて経時的に測定した。In vivoイメージング画像では蛍光ラベル化SWCNT投与マウスの全身蛍光強度は時間経過に伴って低下し、投与50-80分後にはCy5のみを投与した場合に比べ下腹部により多く蛍光が分布していた。また蛍光ラベル化SWCNT投与マウスの全身蛍光強度の時間推移はCy5のみを投与した場合とは異なっていた。また蛍光ラベル化SWCNT投与マウスの尿を採取しゲルろ過したところ分子量4万~2000万程度の巨大蛍光分子が確認されたことから、作製した蛍光ラベル化SWCNTは少なくとも一部は生体内で分解されることなく、尿中へ排泄されることが明らかとなった。今後蛍光ラベル化SWCNTの化学的および物理化学的特性と体内動態特性の関係について検討し、ドラッグキャリアーとしての有用性について考察する。
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