プロテオミクス解析により、新規に同定したタンパクのうち、タンパク質AおよびBの二種について、腎臓がん細胞株Caki-2、ACHNおよび786-0にsiRNAを用いて発現のノックダウンを行った。いずれも発現量は20-30%程度に低下することを確認した。発現の低下した細胞の生存率をコントロールの細胞株と比較したが、顕著な変化は認められなかった。同時にアポトーシスの指標となるBax、Bclならびにがん細胞の増殖や血管新生に重要な役割を果たしているVEGFの発現量も検討した。しかし、いずれも顕著な差は認められなかった。したがって、今回選択したタンパク質AおよびBは少なくとも単独では、がん細胞の増殖等に大きな役割を果たしていない可能性が考えられた。 そこで、次に種々のがん細胞でアポトーシスを誘導することが知られているPPARγ刺激薬のチアゾリジン誘導体を用いて、腎臓がんに対する作用を検討した。その結果、濃度依存的に生存率を低下させた。また、クロマチンの凝集が認められたことより、アポトーシスを介したものであることが示唆された。しかし、PPARγ阻害薬の影響は認められず、これまで報告のあるPPARγ依存的なアポトーシスではなく、PPARγ非依存的であることが示唆された。さらに、このアポトーシスは抗酸化剤によっても阻害されなかった。今後、この作用機構を詳細に解析することにより、新規創薬ターゲットの探索ならびにその妥当性の評価を行う。
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