研究概要 |
HGFは血管新生を促進する組織再生因子で、癌組織の増殖に密接に関与している。NK4はHGFレセプターに競合的に結合し、HGFによる血管新生作用を制御でき、血管新生が密接に関与する癌の増殖を抑制できることが明らかになっている。そこで、血管新生が病態に密接に関与する、関節リウマチへの効果を検討した。NK4遺伝子をアデノウイルスベクターに組み込み、関節リウマチモデルマウス(SKGマウス)に静脈注射すると、24時間後に肝臓にNK4蛋白が発現し、血中に高濃度のNK4蛋白が検出された。SKGマウスにβ-グルカンを静脈注射し関節炎を誘導し、同時にNK4遺伝子を導入すると、コントロールベクターを導入したSKGマウスに比べ、有意な関節炎抑制効果が認められた。関節組織の病理組織学的検査では、滑膜組織の血管新生、炎症細胞浸潤が著明に減少し、骨X線検査でも骨破壊が抑制され、滑膜組織のIL-1、IL-6、TNF-αなどの炎症性サイトカインや破骨細胞分化誘導に密接に関与するRANKLの発現も抑制されていることが明らかになった。ヒト滑膜細胞株(MH7A)やマウスCD4+T細胞にリコンビナントNK4タンパク(rNK4)を添加し、その効果を検討した結果、CD4+T細胞からのIFN-γ,IL-4,IL-17の産生、MH7A細胞からのVEGF,bFGFの産生が抑制されることも明らかになった。さらに、筋芽細胞株(C2C12)を用いた骨芽細胞分化系にNK4を添加すると、骨芽細胞への分化が促進されることが明らかになった。以上の研究成果から、NK4は滑膜組織の血管新生、炎症性細胞浸潤、炎症性サイトカインやRANKLの発現を抑制し、関節滑膜の増殖と骨破壊を抑制するのみならず、骨芽細胞に直接作用して骨新生を促進できることが明らかになった。NK4は新規関節リウマチの治療薬として期待できる。
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