研究課題/領域番号 |
21590191
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
佐井 君江 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 室長 (20195960)
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研究分担者 |
香取 典子 国立医薬品食品衛生研究所, 薬品部, 室長 (60142121)
黒瀬 光一 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 室長 (30280754)
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キーワード | 薬剤反応性 / ゲノム / 臨床 / 薬理学 / 抗がん剤 / 遺伝子 |
研究概要 |
本研究は、薬物結合性血漿蛋白α-1-acid glycoprotein(AGP)をコードするORM遺伝子(ORM1及びORM2)の日本人の遺伝子構造を明らかとし、抗がん剤paclitaxel(PTX)の薬物応答に影響する遺伝子型を同定することを目的としている。本年度はin vitroにてORMの発現調節領域の特定ならびにプロモーター多型による発現影響を解析した。また、PTX投与患者の治療前AGP値及びORM多型と生存期間との関連を解析した。 1.ヒトORM遺伝子の発現調節領域および多型影響の解析 ORM1及びORM2の種々の長さのプロモーター領域(約1.1kb上流まで)を挿入したレポーターアッセイ系を構築し、HeLa細胞を用いて、定常レベル及びデキサメタゾン(DEX)またはIL-Iβによる活性影響を調べた。その結果、近位プロモーター領域(約190 bases)のアッセイ系では、ORM1およびORM2ともに、DEXによる誘導およびIL-1βによる相乗効果が認められた。一方、full length(1.1kb)の系では、ORM1の定常レベルはORM2の約2倍であり、ORM1ではIL-1βによる上昇が認められた。なお、ORM1多型(-559T>A)をORM1 full lengthに導入した結果、定常レベル及びDEXによる誘導に影響は見られなかった 2.ORM遺伝子多型とPTX応答性の解析 PTX投与患者で、治療前AGPの高値群(≧150mg/dL)では、治療後の生存期間の有意な短縮が見られた(p<0.0001)。一方、上記のORM1多型による生存期間への有意な影響は認められなかった。 以上より、ORMの上流770b~1.1kb領域が、ORM1及びORM2の異なる発現・誘導機構に関わる可能性が示唆された。一方、プロモーター多型のPTX療法における臨床的意義は低いものと推察された。
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