δ-プロトカドヘリン(δ-Pcdh)ファミリーの中枢神経系形成と器官形成における機能的多様性の意義を系統的・網羅的に解明することが、本研究の目的である。Pcdhは、無脊椎動物から脊椎動物まで多種存在するファミリーを成している。その一部は遺伝子上にクラスターを成し、その組織的な研究によって脳システム形成に関与すると考えられるに至っている。一方、クラスターを形成しないプロトカドヘリンについては、個々に研究が進められている。申請者らはこれまで、そのδ-Pcdhサブファミリーについて研究し、δ-Pcdhの多くが胚の頭部や中枢神経系に発現しそれらの発生に関与することを示してきた。平成22年では、Pcdh-19をクローニングして発現パターンを解析した。Pcdh-19は初期胚の神経竜骨や後脳の一部に発現し、後に中枢神経系に広く発現した。発生が進むと発現は脳の背外側に限局するようになり、脊髄の発現は消退した。網膜や耳胞にも発現した。これらの結果をまとめ、共同研究者との共著論文として公表した。またPcdh-10については、2つあるアイソフォーム、Pcdh-10aと10bをクローニングし、発現パターンを比較検討した。Pcdh-10bについては既に公表されている結果も多いが、10aについては他のプロトカドヘリンにみられない特徴的な発現パターンを示した。Pcdh-10aの機能解析についても準備した。発表に向けてデータを蓄積すべく準備中である。一方、転写因子Otx-1について、脳発生の細胞接着に関与すると考えられており、一部のドメインを欠失する変異体を使ってドメイン解析を行い、結果を論文として発表した。
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