精子の成熟に重要な器官である精巣上体では、生後の発達段階において頭部、体部、尾部の部位ごと精巣上体管上皮の分化が起こり、特有の機能をもつようになる。その分子機構を明らかにするために、マウスの精巣上体における遺伝子発現について解析を行った。 本年度は、マイクロアレイ解析により精巣上体で高レベルの発現が確認されている遺伝子のうち、Tmco7、Ppme1、BB583831[EST]、Mapklip1、Mbnl3、BAC clone RP23-387J8、Gstm7、Pyroxd2、Rnf185に着目し、これらが精巣上体以外の臓器でも発現するのか否かをRT-PCR法により解析した。臓器は8週齢の雄マウスより摘出した。また精巣上体以外の臓器としては、精巣、精管、骨格筋、脳、肺、心臓、肝臓、腎臓、小腸を対象とした。 解析の結果、調べた遺伝子はすべての臓器において発現していることが確認された。一方で、いくつかの遺伝子にはRT-PCR結果に特徴がみられた。まず、精巣上体におけるBB583831[EST]のPCR産物は他の臓器のものより100bpほど短く、精巣上体では他とは違うアイソフォームが発現しているのではないかと考えられた。また、Mbnl3は精巣上体および腎臓以外では副産物を生じた。逆にBAC clone RP23-387J8は精巣上体、精管、脳および骨格筋において、さらにPyroxd2は精巣上体、精管、脳、肺において、期待するPCR産物の他に副産物を生じた。これらの副産物が複数のアイソフォームの発現を示すものか否かは現段階では不明である。 今後は精巣上体に特徴的なPCR産物を生じたBB583831[EST]についてさらなる発現パターン解析を行うとともに、新たな精巣上体特異遺伝子の検索を継続し、精巣上体の部位別の発現解析および発育段階別の発現解析を行う予定である。
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