研究課題
左右軸の決定に異常を示すメダカ突然変異体jaodori(joi)の原因遺伝子としてdynein axonemal intermediate chain 2(dnai2)を同定した。変異はトランスポゾンの挿入により引き起こされており、この遺伝子産物の機能喪失をもたらしているものと考えられた。dnai2は繊毛運動を司るダイニン腕の構成タンパク質として知られている。そこで本年度は、この遺伝子の機能喪失が運動性繊毛にどのような異常をもたらしているのかについて解析を行った。魚類では、発生時期の尾部腹側に存在するクッペル胞と呼ばれる器官に運動性繊毛が存在し、その運動によって引き起こされるクッペル胞内の水流が左右軸の決定に必須であることが知られている。このクッペル胞内の運動性繊毛を材料に、dnai2の機能喪失が繊毛の構造および機能にどのような影響をもたらしているのかについて検討した。野生型胚にdnai2に対するアンチセンスオリゴを導入すると、joi変異体と同様に左右軸のランダマイズが観察された。そこでこの胚を用い、透過型電子顕微鏡による繊毛微細構造の観察を行ったところ、ダイニン腕の欠損が観察された。更にこのアンチセンスオリゴ導入胚を用いてクッペル胞内の水流を観察したところ、野生型で観察されるクッペル胞内の水流が失われていた。以上のことから、dnai2の機能喪失はダイニン腕の欠損を引き起こし、その結果繊毛が運動能を失うことによりクッペル胞内の水流が失われ、左右軸の決定機構に異常を来していることが明らかとなった。
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Endocrinology 151
ページ: 695-701
Neuroscience Research 66
ページ: 151-161