これまで、BMP-2が上皮間葉転換後の心クッション間葉細胞に発現しており、type I BMP receptorsも同様にクッションに局在していることを明らかにしてきた。同時期にNotchも同様な発現パターンを示しているとの報告があり、今回BMPとNotchシグナルが互いに関係して、心臓房室弁形成時の心クッション間葉細胞の分化と成熟を調節しているとの仮説をたて、これを検証するため、本年度は以下のような研究を行なった。 まず、既報の細胞培養系を使って、HHstage24の心臓房室弁の間葉細胞の培養を72時間行なった。同時に、培養液にBMPを加えたものと、BMPアンタゴニストであるNogginを加えたものを用いた培養も行なった。培養した細胞からRNAを抽出し、RT-PCRを行なってNotchの発現を定量評価した。その結果、BNPを加えた細胞ではNotchの発現がコントロールの約4倍に増加し、Nogginを加えた細胞ではNotchの発現が0.3倍まで減少していた。さらに、同様の方法を用いて、Notchシグナルの下流に存在するHairy-1の発現を定量評価した。その結果、BNPを加えた細胞ではHairy-1の発現は約10倍に増加し、Nogginを加えた細胞ではHairy-1が0.2倍まで減少していた。さらにHairy-1はNotchアンタゴニストであるDAPTによってその発現が抑制されることも確認した。 これらの検討から、BMPは心臓房室弁形成の過程で、Notchシグナルを増強させる働きをしていることが示唆された。今後は、BMPの持つ骨形成作用がNotchシグナルによってどのような影響を受けるかを検討していく予定である。
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