昨年度までの研究で、心臓房室弁形成の過程において、BMP-2はhairy-1を介してNOTCHの発現をコントロールしていることを明らかにしてきた。BMP-2は房室弁において、間葉細胞の遊走に深く関与して、その形態形成を担っており、その効果はNOTCHシグナルを介している可能性が高いと考えられる。間葉細胞の遊走を促進するメカニズムを明らかにし、BMP-2とNOTCHシグナルがどのように影響し合っているかを検討した。 細胞の遊走に関与する要素としてヒアルロン酸を取り上げ、BMP-2とヒアルロン酸の関係を明らかにするとともに、細胞遊走を促進する機序についての実験を行った。Stage24の鶏胎仔の心内膜床の間葉細胞をコラーゲンゲル上で培養し、細胞遊走の定量的観察を行った。同様の培養系で、BMP-2およびその阻害薬Nogginを加えて培養し、ヒアルロン酸の発現を免疫染色法とRT-PCRを用いて検討した。最後にヒアルロン酸を阻害するolygomerおよびPI3Kシグナルを抑制するWortmanninを加えて培養し、それぞれの細胞遊走に対する効果を評価した。その結果、BMP-2は容量依存性にヒアルロン酸の発現を増強させた。ヒアルロン酸は心臓房室弁における細胞遊走を促進するが、その効果は阻害薬であるolygomerで減弱した。BMP-2によって促進された細胞遊走はWartomanninによって阻害された。 以上より、BMP-2はヒアルロン酸の発現を増加させることで、細胞遊走をコントロールしており、その機序にはPI3Kシグナルが関与することが示唆された。
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