昨年度までの研究で、BMP-2はヒアルロン酸の発現を増加させることで、細胞遊走をコントロールしており、その機序にはPI3Kシグナルが関与することが示唆された。本年度は、明らかになったこれらのメカニズムとNotchシグナルがどのような関連を持っているかについてさらに検討をかさねた。われわれは、BMP2によって本来もたらされる骨化の過程が、Notchシグナルによって抑制されているのではないかという仮説を立てて以下の実験を行った。これまでの研究で確立した実験系であるhanging drop cultureの手法で、Stage24の鶏胎仔の心内膜床の間葉細胞をコラーゲンゲル上で72時間培養し、その細胞集団内のアルカリフォスファターゼを測定することで、細胞内のmineralizationの程度を判定した。M199のみでこの培養を行った場合と、BMP200μg/ml加えた場合、BMP200μg/mlとNotchのantagonistであるDAPTを加えた場合、さらにDAPTのみで培養した場合で、mineralizationの評価を行った。その結果、BMPのみの場合でもM199のみの場合に比べてALP値は軽度上昇していたが、DAPTを加えることで、さらに高値となることが判明した。この結果は、心臓房室弁形成において、BMPがもつ骨化作用をNotchシグナルが抑制し、弁組織のmaturationに重要な働きをしていることを示唆すると考えられた。
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