研究概要 |
神経細胞の軸索や樹状突起の形成には様々な蛋白が重要であるが、本研究は極性輸送に関わる蛋白のノックアウトマウス(全身のノックアウトマウスまたは必要に応じて神経特異的ノックアウトマウス)を作成・解析して、神経細胞の極性輸送と極性形成との関連を解明することを目的としている。 小胞体に局在する蛋白「p31」の神経特異的ノックアウトマウスを作成したところ、神経組織において広範なアポトーシスが認められ、細胞内においては小胞体同士の異常な融合が形態学的に観察された。さらに本研究では、p31欠損によって小胞体からゴルジ体への極性輸送が阻害され、これがアポトーシスにつながることを解明し、p31蛋白が小胞体の形態維持と機能に不可欠であるという結果を、平成21年度にMolecular and Cellular Biologyに発表した。 現在は、極性輸送に重要と考えられる3つの遺伝子「Rab8a,Syntaxin3,VAMP7」が、神経組織の極性の形成・維持に与える影響の解明を、Rab8aとSyntaxin3は神経特異的ノックアウトマウスを、VAMP7は全身ノックアウトマウスを用いて、研究を進めている。具体的には、大脳皮質と海馬、小脳における組織系の異常の有無を、通常の組織染色および軸索・樹状突起の蛋白に対する抗体を用いた免疫蛍光染色を用いて観察している。また、ノックアウトマウスの海馬の初代培養系を用いて、軸索と樹状突起の伸長の様子も観察している。 他グループの研究において、Syntaxin3欠損により神経突起の伸長が抑制されることが報告されているが、私達の神経特異的ノックアウトマウスを用いた解析ではこの報告とは異なる興味ある結果が得られており、現在投稿の準備を行っている。
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