研究概要 |
哺乳類の神経系発生時の神経細胞が神経突起の萌芽、神経成長円錐の形成、神経突起の伸展などのステップにおける、外界環境からの刺激に応答した神経細胞内の分子応答カスケードのうち、本研究においてはcAMP依存的な制御システムに着目し、青色光によって活性化されるアデニル酸シクラーゼ(PAC)によってACの活性を光のON/0FFでスイッチして細胞内cAMP濃度を変化させた上で神経細胞の挙動や形態的変化を観察し、cAMP依存性の細胞機能制御メカニズムを時空間的に高い解像度を持って解析することを最終的な目標とした。 当初、鞭毛藻類由来のPAC遺伝子(euPACα)を用い、IRESを挟んで膜移行シグナルを付与した蛍光タンパク質tomatoを連結させた遺伝子導入ベクターを構築し、HEK293細胞に導入して光照射による細胞内cAMP濃度の上昇をELISA法によって生化学的に確認した。しかし、このベクターでは神経細胞類似のPC12細胞での突起萌芽や伸長性における光制御の効果が形態的な変化としては確認されなかったため、より分子活性化能の高い新規のバクテリア由来のPACであるbPAC(Stierl et al., 2011)に切替え、プロモーターの改変や遺伝子産物の細胞内での安定性を高める工夫をした。bPACによる細胞内cAMP濃度の一般的な時空間的光制御能については、メラノーマ細胞を用いてcAMP濃度上昇はFRETプローブで、またメラノソームの動態変化は蛍光タンパク質mCherryで標識したメラノソーム関連タンパク質(Rab27a)を追跡することで確認をしている。 マウス胎児海馬由来初代神経細胞培養系への遺伝子発現系としては、プロモーターにCAGを用い、エレクトロポレーションシステムによって良好の結果を得ており、PC12細胞も含めて神経系の細胞への応用を行う段階まで研究を進めた。
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