研究概要 |
FABP分子群は、リガンドである脂肪酸の脂肪酸代謝物の細胞内取り込み・輸送・代謝の調節などを介して様々な細胞機能に関わっていると考えられている。本年度の研究では、FABP遺伝子ノックアウトマウスおよび各種培養細胞への強制発現系を樹立し、これらを用いてFABP分子群の細胞内シグナル伝達系の制御への関与とその機構、脂肪酸代謝物であるエイコサノイドの産生系への関与と活性の制御、に焦点を当てながら検証を加えた。その結果、(1)脳型FABP欠損アストロサイトでは、分裂能の低下が起こっていることが明らかになった(投稿準備中)。(2)表皮型FABP分子が、マウス表皮細胞においてリノール酸の代謝制御を介して、早期分化過程に関与していることが判明した(投稿中)。(3)心臓型FABP分子が、マウスアストロサイトの脂肪酸代謝を介して、ドーパミン受容体の活性調節に関与していることが明らかになった(Shioda et al., J Neurosci, 2010)。(4)表皮型および脂肪細胞型FABP分子が、マウス胸腺において胸腺細胞の分化に主要な役割をもつ胸腺ナース細胞に特異的に発現し、胸腺細胞の成熟に関与している可能性を見出した(投稿準備中)。以上の結果について、各種FABPがいかなる細胞内シグナル伝達機構を制御することで、細胞機能の発現を担っているのかについて、免疫沈降法やyeast two hybrid法などを用いながら検討を加えている。 さらに平行して行った形態学的解析からは、E-FABPが腸管粘膜の免疫応答に重要な役割を担うM細胞に特異的な局在様式を示すこと(Suzuki et al., Histochem Cell Biol, 2009)、さらに複数のFABP分子がマウス網膜において時空間的な局在の多様性を示すことを明らかにした(Saino-Saito et al., Cell Tissue Res, 2009)。
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