野生型マウスとアンジオポエチン遺伝子改変マウスを用いて、独自に作成した中間型VEGF-C添加コラーゲングラフトモデルを作製し、生体内リンパ管新生におけるアンジオポエチンの発現動態とアンジオポエチン-2(Ang-2)の必要性を明らかにした。さらに、Ang-2はリンパ管内皮細胞に対してagonistとして作用し、リンパ管新生を活性化させるだけでなく、Foxc2とともにPDGF-BB-PDGFR-βによるシグナリングカスケードを惹起させることでリンパ管の形態形成にも密接に関与することが判明した。これまでの研究成績を総合的に解析した結果、中間型VEGF-Cは従来の脈管薪生因子より有効にリンパ管新生を誘導するイニシエーターであり、Ang-2は新生リンパ管の成長と形態形成に与る重要なプロモーターであると考えられた。これより、中間型VEGF-CとAng-2を用いた数種類の成長因子カクテルを作製し、これらを添加したグラフトを生体に移植したところ、中間型VEGF-C単独よりも旺盛なリンパ管新生を導くだけでなく、小静脈からのリンパ管発生を誘導する成長因子カクテルを抽出することが出来た。誘導された新生リンパ管は組織液の吸収や細胞の輸送などの機能性を有しており、本研究で開発した中間型VEGF-C-Ang-2カクテルは現在医学的・社会的問題として注目される難治性リンパ浮腫に対して新たな治療戦略を提供するツールとして期待できるものと思われる。以上の研究成果をもとに現在、極めて細い注射針で生体注入可能なリンパ管新生ドラッグデリバリーシステムとして中間型VEGF-C-Ang-2カクテルによる自己組織化ナノペプチドハイドロゲルの開発を手掛けている。これを原発性・続発性リンパ浮腫モデルに適用し、その効能を解析することにより難治性リンパ浮腫治療への臨床応用を目指している。
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