研究概要 |
発生初期の脊髄神経節細胞(DRG)の軸索は脊髄背側からの誘引作用によって脊髄背外側部に侵入するが,その分子メカニズムはほとんどわかっていない.私たちはこの誘引メカニズムの解明を目指して,マイクロダイセクション法とマイクロアレイを併用し,脊髄背側部に発現する25個の新規遺伝子を得ることに成功した.平成21年度には,これらの遺伝子群のうち,特に興味深い発現を有する3個の遺伝子に注目し,マウス胚とニワトリ胚におけるその発現様式の詳細な解析を行った.また,さらなる機能解析に向けて各遺伝子のニワトリホモログ遺伝子を取得した.平成22年度には,これらのホモログ遺伝子の発現ベクターを構築し,ニワトリ胚への電気穿孔法による遺伝子導入によって,各遺伝子の機能解析を行った.その結果,DRG軸索の走行に異常を認める例が散見した.今年度には,各遺伝子導入の結果を厳密に評価するとともに,組織培養法を用いて各遺伝子産物のDRG軸索に対する活性の有無を検討した.その結果,mouse Fukushima 1 (mF1)と仮に命名した遺伝子の遺伝子産物がDRG軸索を誘引する活性を有することを見出し,電気穿孔法の結果と併せて,mF1が脊髄背側部由来誘引因子の有力候補であることが判明した.本結果は,今年度の日本解剖学会総会および日本神経科学大会で既に発表しており,今後さらなる検討を重ね,最終的な研究成果を国際的な学術雑誌に原著論文として発表する予定である.
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