ガラニン様ペプチド(GALP)は視床下部弓状核で産生され、摂食調節やエネルギー消費に深くかかわっている神経ペプチドである。GALPは循環血液中にも存在していることから末梢臓器からの分泌も推測される。タモキシフェン誘導型Cre-loxPシステムによつてGALP発現細胞特異的に緑色蛍光タンパク質を発現する遺伝子改変マウスを用い、緑色蛍光を指標に末梢臓器のGALP産生細胞を機能形態学的に解明することを目的とした。最初に野生型C57BL/6マウスを用いて、各臓器でのGALP mRNAの発現を検討した。大脳、小脳、視床下部、消化管などの腹部臓器、精巣、骨格筋、白色および褐色脂肪組織から全RNAを調製し、TaqMan PCR法を用いて、GALP mRNAの発現を精確に調べた結果、発現量に違いがあったが、膵臓以外の臓器でGALP mRNAの発現が認められた。メタボリックシンドロームに関与する白色脂肪組織、エネルギー代謝に関与する褐色脂肪組織に注目し、タモキシフェン誘導型Cre-loxPシステムによってGALP産生細胞特異的に緑色蛍光タンパク質を発現する遺伝子改変動物を用い、それぞれの脂肪組織における変異緑色蛍光タンパク質の検出を試みた。タモキシフェン投与後、灌流固定した。褐色および白色脂肪組織から凍結切片を作製し、共焦点レーザー顕微鏡で観察した結果、褐色および白色脂肪組織で緑色蛍光タンパク質の発現を観察した。またウェスタンブロッティング法でも、GFPおよびCreの発現を検出した。しかしGALP特異的抗体がないために、GALPペプチドそのものは検出できなかった。今年度の実験より、脂肪細胞がGALP産生臓器のひとつである可能性が示された。次年度はGALPペプチドを検出する予定である。
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