本研究は、転写因子Sox13の役割を、上皮間葉相互作用や幹細胞の研究モデルとして注目されている皮膚を用いて解析することを目的としている。私たちが独自に作製したSox13変異マウスを用いた解析がその中心を占めるが、21年度にマウスの飼育施設で感染があったため、マウスのコロニーを縮小せざるを得ず、マウスを用いた研究を計画通りに進めることができなかった。 研究計画の「皮膚の発生、毛包形成過程におけるSox13の発現パターンを調べる」一環として、脱毛実験を行った。マウスの背部を脱毛テープで脱毛すると、通常脱毛後4日ほどで毛包が現れ、8日目で成長期に、20日目前後で退行期から休止期に入る。10週令のSox13ヘテロ変異マウスを用いて脱毛4日後、8日後、16日後、20日後、28日後に皮膚を採取し、X-gal染色を施行してSox13陽性細胞の局在を調べた。その結果、4日目の切片においては毛球の一部に、8日目以降の切片においては外毛根鞘の一部にSox13陽性細胞が存在していることが判明した。これは、毛包の形成にSox13が関与していることを示しており、今後ホモ欠損マウスも用いて、分化マーカーや幹細胞マーカーの発現との関連を詳細に調べる予定である。 研究計画の「基底細胞癌(BCC)におけるSox13の発現の検討」については、ヒトのBCCの手術標本を用いてSox13の免疫染色を試みたが、用いた抗体のバックグランドが高く、はっきりした結果を得ることが出来なかった。そこで、マイクロダイセクションシステムを用いて正常部分と腫瘍部分を切り取り、mRNAレベルでSox13の発現を比較検討している途中である。
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