皮膚は上皮間葉相互作用や幹細胞の研究モデルとして注目されている。本研究の目的は、皮膚における転写因子Sox13の役割を、独自に作製したSox13変異マウスを用いて解析することである。研究計画の「皮膚の発生、毛包形成過程におけるSox13の発現パターンを調べる」では、次の結果を得た。 1.毛周期におけるSox13の発現パターンをLacZ染色で調べた結果、Sox13の発現は毛周期の間にダイナミックに変化することがわかった。すなわち、Sox13の発現は、生後直後に外毛根鞘にドット状に始まり、成長期にはその発現がピークに達すること、その後、退行期になると発現が一旦消失し、そして、休止期後半に再び発現することがわかった。これは、Sox13が毛周期の新たなマーカーとして有用であることを意味しているだけでなく、毛周期の周期性の制御に関わることを示唆している。 2.Sox13の発現を毛嚢バルジ幹細胞マーカーであるkeratin15の発現と比較したところ、両者の発現部位が一部重複していることがわかった。これは、Sox13陽性細胞が一部毛嚢バルジ幹細胞としての機能を担っていることを示唆している。現在、keratin15以外の毛嚢バルジ幹細胞マーカー(Sox9など)との局在を検討している。 3.研究計画の「基底細胞癌(BCC)におけるSox13の発現の検討」については、市販の複数のSox13の抗体を購入して検討したが、LacZ染色でみられたSox13発現パターンを再現できた抗体は見つかっておらず、進展しなかった。
|